10月に入った途端、AI半導体株をすすめる記事があふれている。エヌビディア、ブロードコム、TSMCがいちばん多く名前を挙げられているけれど、本当に今買っていいのか気になる人も多いはずだ。
先に言っておく。この記事は売買をすすめるものじゃない。
ウォール街の専門家がどんな根拠でどの銘柄を挙げたのか、そして推薦が出たあとに株価がどう動いたのかを、数字で比べていく。
株価はすべて米国市場の10月1日(現地時間)終値で、単位はドルだ。
目標株価と投資判断はアナリスト個人の意見だから、そのまま信じずに参考程度に見てほしい。
10月のAI半導体セクターを一言でまとめると、こうなる。AIの計算需要は爆発していて、ウォール街も強気だ。ただ、推薦が出た9月以降にすでに大きく上がった銘柄もある。
だから、推薦リストそのものより、推薦された時点と今の差を見るほうが大事なんだ。
どうしてみんなAI半導体を挙げるのか。9月10日、パイパー・サンドラーのデビッド・オコナーがAI半導体セクターの分析を始めた。
核心の根拠は、AIが計算能力に飢えているということだ。エヌビディアH100 GPUの1時間あたりレンタル料が、12月の2.00ドルから今は2.60ドルへ30%上がり、2027年の生産枠はすでに完売、2028年の注文も埋まっているという。
AIコンピュート市場は2030年に2.2兆ドルへ育ち、今の約5倍になると見込んだ。
✦ エヌビディア(NVDA)の株価
過去約1年の推移、米ドル
業績もこの流れを裏づけている。エヌビディアの第2四半期(8月26日発表)の売上高は962億ドルで前年比106%増、データセンター売上高は890億ドルで117%増だった。
第3四半期の売上高は1,080億ドル前後を見込んでいて、中国向けデータセンターの計算売上は1ドルも入れていない数字だ。
ブロードコムの直近の四半期(会計第3四半期)の売上高は296億ドルで86%増、AI半導体の売上高は167億ドルで221%増だった。第4四半期のAI半導体売上高は217億ドルにさらに膨らむと明らかにしている。
✦ ブロードコム(AVGO)の株価
過去約1年の推移、米ドル
TSMCの8月の売上高は5,148億台湾ドルで前年比53.3%増となり、4か月連続で過去最高を記録した。月間売上高が5,000億台湾ドルを超えたのは初めてだ。
✦ TSMC(TSM)の株価
過去約1年の推移、米ドル
では、専門家は誰を挙げたのか。
✦ だれがどの銘柄を挙げたのか
専門家ごとの推薦(目標株価の単位:ドル)
パイパー・サンドラーはエヌビディアとブロードコムをトップピックに指定した。エヌビディア、ブロードコム、AMD、アーム、マーベルの5社は「オーバーウェイト」で、インテルとクアルコムは「ニュートラル」だ。
目標株価は、エヌビディア300ドル、ブロードコム460ドル、AMD600ドル、アーム320ドル、マーベル270ドル、インテル110ドル、クアルコム190ドルだ。
バーンスタインのステイシー・ラスゴンは、8月27日にエヌビディアの目標株価を315ドルから400ドルへ、9月3日にブロードコムの目標株価を550ドルから575ドルへ引き上げた。どちらも「買い」の判断だ。
ローゼンブラット証券は、ブロードコムの目標株価を500ドルから600ドルに引き上げた。
バンク・オブ・アメリカのビベク・アリヤは、2026年の見通しでエヌビディアを最も有利な立場にある銘柄に挙げ、ブロードコム、ラムリサーチ、KLAも推薦リストに入れた。
その後、今年の半導体売上高の予想を1.3兆ドルに引き上げ、エヌビディア、ブロードコム、マーベル、AMDをAIコンピュートを引っ張る銘柄として挙げている。
ジェフリーズのブレイン・カーティスは、ブロードコムの目標株価を6月に500ドルから550ドルへ上げ、「買い」の判断を続けている。
投資情報メディア、モトリーフールの寄稿家Keithen Druryは、10月1日の記事で、10月に買うAI株としてエヌビディア、ブロードコム、TSMCを挙げた。
これは寄稿家一人の個人的な意見だから、アナリストの意見とは分けて見る必要がある。
✦ 平均目標株価は、終値より上か下か
10月1日の終値と、ウォール街の平均目標株価の差(単位:ドル)
ここで、ウォール街のアナリスト全体の平均目標株価と、10月1日の終値を比べてみる。同じ日付、同じ出典の基準だ。
エヌビディアは、終値230.86ドルに対して平均目標株価が327.70ドルで、41.95%の上昇余地があるという。
ブロードコムは343.64ドルに対して531.85ドルで54.77%、TSMCは459.20ドルに対して552.26ドルで20.27%、マーベルは268.08ドルに対して290.97ドルで上昇余地は8.54%だ。
一方でアームは292.34ドルに対して288.71ドルと、逆に1.24%下回っている。AMDは615.73ドルに対して618.51ドルで0.45%の上昇、インテルは120.00ドルに対して116.37ドルで3.03%下回る。
集計元によって数字が少しずつ違って、たとえばエヌビディアは約324〜328ドル、ブロードコムは約527〜532ドルと出ることもある。
✦ パイパー・サンドラーの目標株価を、10月1日の終値で計算し直すと
目標株価はそのまま、終値だけを最新に替えて計算した
ここで目を向けたいことがある。パイパー・サンドラーが分析を始めた9月中旬には、5銘柄の上昇余地が19%から37%と紹介されていた。
ところが同じ目標株価を10月1日の終値で計算し直すと、かなり変わる。エヌビディアは約30%、ブロードコムは約34%、アームは約9.5%だ。
マーベルは約0.7%しか残っておらず、AMDは終値が目標株価600ドルを超えて、逆に2.6%下回っている。推薦が出たあとにすでに上がった銘柄は、その分だけ余力が減ったということだ。
銘柄ごとに見てみよう。エヌビディアは、いちばん多くの専門家が挙げた銘柄だ。データセンター売上高は117%増え、パイパー・サンドラーはAIコンピュート市場でのエヌビディアのシェアを約80%と評価した。
ただし、第3四半期の見通しに中国向け売上が入っていない点は覚えておいてほしい。
(グラフィックカードに詳しい人は知ってるよね?少し前まで400万ウォン台でも買えたRTX5090が、今はほぼ1,000万ウォンもする……グラフィックカードの値段が株より速く上がってるじゃないか。)
✦ ブロードコムとアンスロピックの契約、要点
10月1日にブロードコムの株価が下がった理由として挙げられた話
ブロードコムは、パイパー・サンドラーが推論用カスタムチップ市場のシェアを約75%と見ていて、バーンスタインとローゼンブラットは575ドルと600ドルまで目標を引き上げた。それなのに10月1日には株価が2.1%下がり、343.64ドルで取引を終えた。
ロイターなどは、ブロードコムがアンスロピックに最大420億ドルまでチップのリース資金を貸すという契約が、アンスロピックの上場書類で明らかになったと伝えた。
アンスロピックが5年間で結んだ1,252億ドルのTPUコンピュート契約の、約3分の1にあたる規模だ。
アンスロピックがブロードコム最大の顧客になりうる点で、顧客の集中と信用リスクを心配する見方が出た。
TSMCは月間売上高が過去最高を更新し続けていて、ウォール街の平均目標株価は終値より約20%高い。
9月の月間売上高は10月8日、第3四半期の決算は10月15日に発表される予定だ。どちらの日付もTSMCの公式日程に載っている。
マーベルは、パイパー・サンドラーの目標株価が270ドルなのに終値が268.08ドルで、すでに目標にほぼ届いている。代わりに10月6日にニューヨークでインベスターデーを開き、グーグルとの関係やカスタムチップ事業の長期見通しを明らかにする予定だ。
この発表が株価の方向を分けるかもしれない日程だよ。
✦ AMDとインテル、急騰後の数字を比べる
10月1日の終値基準。上昇率は媒体ごとに集計日が違う
急騰したあとは慎重に、という声もある。今年に入ってAMDは約190%、インテルは約210〜230%上がった(媒体ごとに集計日が違うので少しずつ違う)。
Keithen Druryは、両銘柄の成長期待がすでに株価に織り込まれたと見ている。AMDは終値615.73ドルがパイパー・サンドラーの目標株価600ドルより上にあり、ウォール街の平均目標株価との差は0.45%しかない。
インテルは、パイパー・サンドラーが「ニュートラル」判断で目標株価110ドルを示したのに、終値は120ドルだ。「AMDは今買っていいのか」が気になっていたなら、専門家の目標株価で見るかぎり、残っている余力はほとんどないというのが数字の示す事実だ。
ちなみに、AIバブルがもうすぐ弾けると主張する専門家もいる。関心のある人は、下の動画を見てみてほしい。
下の動画はどちらも、市場をかなり悲観的に見ている。もしAI株をたくさん持っているか、早く買いたくて興奮している状況なら、こういう動画は良い参考になるはずだ。
「いきなりAI株を全部売らなきゃいけないのか……?」と怖くなるかもしれない。でも、まったく逆の話をしている人も多いから、それぞれ賢く判断しよう。
✦ 10月に確認したい日程3つ
すべて米国と台湾の現地日程
まとめるとこうだ。専門家たちは、AIコンピュート需要が伸び続けるという点でおおむね意見が一致していて、エヌビディア、ブロードコム、TSMCがいちばん多く挙げられた。
ただし、推薦の時点以降にすでに上がった銘柄は、目標株価に対する余力が大きく減った。
これからは、10月6日のマーベルのインベスターデー、10月8日のTSMCの9月売上高、10月15日のTSMCの第3四半期決算を確認してほしい。
これは投資助言じゃないよ。わかってるよね?大切なお金は自分で守ろう。
今回はここまでにするよ。また会おう。
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