AIデータセンター株「ネクストDC」が1日で42%暴落…何があった?

AIデータセンター株の暴落を描いたイラスト

オーストラリア時間の2026年10月19日。オーストラリア株式市場に上場している「ネクストDC(NEXTDC、ASX: NXT)」は、重要な発表をしなければならないので取引を止めてほしいと、オーストラリア証券取引所に要請した。

それで、取引は10月19日から停止された状態だった。

そして2日後の2026年10月21日、NEXTDCは、「M3 Melbourne Power Delay and Revised FY27 Guidance」という開示を出した。

重要な内容は、メルボルンのM3データセンターの電力供給の遅れと、業績見通しの引き下げだ。その後、取引が再開されると、その日の終値はA$5.35で引けた。最後の取引があった10月16日金曜日の終値A$9.18より、41.72%暴落したのだ。

✦ 取引停止と開示の順番

オーストラリア現地の日付、2026年10月

✔ 10月16日 金曜日:開示前の最後の取引日/終値 A$9.18
✔ 10月19日 月曜日:会社の要請で取引停止が始まる/取引なし
✔ 10月20日 火曜日:取引停止が続く/取引なし
✔ 10月21日 水曜日:寄り付き前に見通し引き下げを開示、その後に取引再開/終値 A$5.35、-41.72%
✔ 10月22日 木曜日:暴落の次の取引日/終値 A$5.75、+7.48%

その日、オーストラリアのS&P/ASX 200指数は、むしろ0.16%上がった。ネクストDCの投資家たちは、自分たちだけが墜落するジェットコースターに乗っている気分だっただろう。

〈豪州公共放送ABCがNEXTDCの株価急落を現地から報じたニュース映像です。〉
* YouTubeチャンネル『ABC News (Australia)』にあがっている動画だよ。

電気がなければサーバーがあってもお金を稼げない

問題の場所は、メルボルン西部のウェストフットスクレーにあるM3データセンターだ。NEXTDCが案内するこの施設のIT容量は、最大225MW。この数字は、施設が設計上提供できるIT電力容量を意味する。

データセンター会社がお金を稼ぐには、建物とサーバーを備えるだけでは足りない。その施設に大規模な電力を安定的に供給しなければならないけれど、これが簡単な問題ではないからだ。

〈施工会社Kapitolが公開したメルボルンM3データセンターの竣工記録映像です。〉
* YouTubeチャンネル『Kapitol』にあがっている動画だよ。

✦ M3の電力供給が遅れる過程

ジェメナの工事中断からFY2028まで

12026年9月
ジェメナが、住民の意見を聞くために、電力網の増設作業の一部を中断
22027年2月より前
中断した工事を再開するのは難しそうだとNEXTDCに知らせる
3FY2028(2027年7月〜2028年6月)
M3に電力を追加供給する最初の段階が、この時期に延期される見通し

M3に電気をさらに供給するのに必要な工事を担当するのは、電力網事業者のジェメナ(Jemena)だ。ジェメナは、2026年9月、メルボルン北西部の複数の地域の電柱・電力網の増設作業の一部を、住民の意見をもっと聞くために中断した。

NEXTDCの開示によると、現場へのアクセスをめぐる安全問題と、住民・利害関係者の反対があり、地方議会も、追加協議が進んでいるあいだ、関連する道路工事に同意しなかった。

地域では、住宅の近くに設置される電力設備だけでなく、工事の騒音とデータセンターのディーゼル発電機の問題も、論争の的になった。

ジェメナは、中断した工事を2027年2月より前に再開するのは難しそうだと、NEXTDCに知らせた。その余波で、M3に電力を追加供給する最初の段階は、FY2028(2027年7月〜2028年6月)に延期される見通しだ。

つまり、GPUやサーバーが足りないからではなく、電力網の工事と地域社会との協議が遅れて、すでに契約した容量を計画どおりに供給しにくくなったのだ。

売上見通しは22%減り、利益見通しは36%減った

NEXTDCは、2027会計年度(2026年7月1日〜2027年6月30日)の見通しを引き下げた。今回の事態の影響を受けたM3の顧客契約の売上と利益の寄与分を、従来の見通しから除外した結果だ。

売上見通しの中央値は、A$6億2,750万からA$4億8,750万へ、A$1億4,000万下がった。基礎EBITDA(利子・税金・減価償却・無形資産償却前の利益)の中央値は、A$3億9,750万からA$2億5,500万に減った。

✦ FY2027の見通しの変更

2027会計年度、従来の見通し → 修正見通し

純売上
• A$6億1,500万〜6億4,000万 → A$4億7,500万〜5億(中央値基準 -22.3%)
基礎EBITDA
• A$3億8,500万〜4億1,000万 → A$2億4,500万〜2億6,500万(中央値基準 -35.8%)
設備投資
• A$52億5,000万〜57億5,000万 → A$45億〜50億(会社の発表基準で13〜14%減)

会社は、8月に見通しを出すとき、該当するM3の契約から出る純売上約A$1億4,000万と、基礎EBITDA約A$1億4,000万を、それぞれ反映していたと説明した。

現在、契約容量が解約されたわけではないけれど、電力供給の日程に支障が出たので、顧客と調整の手続きを経なければならない。遅れた期間と契約条件によって、補償金が発生することがあり、特定の状況では、顧客に契約の解約権もある。

こんなに不確実な状況に置かれたので、投資家たちが投げ売りに走ったのも理解できる。

新規開発を止めて、すでに契約した顧客から大事にする

NEXTDCは、新しい開発プロジェクトと土地の購入をしばらく保留して、各種の設備投資も再検討すると言った。もちろん、M3の既存の建物の中のデータホールの工事は、続ける計画だ。

ただ、今後12〜18か月以内に提供できる契約顧客の容量や、ほぼ完成したプロジェクトに、資金を優先して配分するということだ。

✦ 総流動性の構成

2026年9月末基準、合計A$86億7,500万

A$12億7,500万現金
A$67億未引き出しの銀行融資枠
現金ではない
A$7億ハイブリッド証券

投資家たちは、NEXTDCがきちんと売上をつくり出すまで耐えられる現金があるのか、気にし始めた。

NEXTDCが9月末に発表した総流動性の「A$86億7,500万」は、現金A$12億7,500万、未引き出しの銀行融資枠A$67億、ハイブリッド証券A$7億を合わせた数字だ。

このうち、銀行の融資枠は、必要なときに条件に従って借りられるお金であって、現金ではない。とにかく、すぐ使える資金が足りないわけではなさそうだけれど、電力供給の遅れによる売上の空白がいつまで続くかは、不確かな状況だ。

(もし使える資金も足りない状況だったら、もっと暴落しただろうな)

暴落の翌日に反発、でもまだ遠い道のり…

✦ NEXTDC(ASX: NXT)の通常取引の終値の流れ

9月28日〜10月22日、オーストラリア現地の取引日の終値(A$)。線は目盛りから読み取った概算

A$5.35A$8.13A$10.91再開 -41.72%9/2810/810/22
最後の取引日(10月16日)から取引再開日(10月21日)まで、10月19〜20日は取引停止のため終値がない。

NEXTDCの株価は、取引停止の前から弱かった。9月28日のA$10.91から10月16日のA$9.18へ、約15.9%下がっていた。続いて、取引が再開された10月21日にA$5.35に急落したのだ。投資家たちは、10月に入って、地獄のような1か月を過ごした。

暴落の翌日はA$5.75へ7.48%反発したけれど、それまでの下落幅を考えると、いつごろ株価が元の位置に戻るのか、確信が持てない。

株価がふたたび上がるには、電力網の工事がいつ再開されて、追加の電力供給がいつ可能になり、影響を受けた顧客契約を守り抜けるかが、具体化されなければならないだろう。

AIデータセンターがたびたび電力問題でつまずく

データセンターは、GPUを買って挿した瞬間からお金を稼ぎ始める事業ではない。電力線と許認可、住民との協議など、数多くの条件がかみ合って、きちんと回ってはじめて、売上が発生し始める。

AIインフラ企業に投資するなら、単に計画された容量や受注契約だけ数えずに、その容量にいつ電気が入って、実際の請求をいつ始められるかまで、見なければならないだろう。

今回のNEXTDCの事例は、まさにその問題が、企業の業績と株価を1日で揺るがしうることを見せてくれた。

これは投資助言じゃないよ。わかってるよね?大切なお金は自分で守ろう。

今回はここまでにするよ。また会おう。

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