
AIバブル論争が熱くなるなか、サーバーをつくって売るスーパー・マイクロが、予想を大きく上回る数字を出してきた。10月20日の取引終了後に公開したFY2027第1四半期の暫定売上見通しは、185億〜195億ドルだ。
従来の見通し145億〜155億ドルと比べると、見通しの範囲そのものが一段階上がった。
中央値で計算すると、売上見通しは150億ドルから190億ドルへ、26.7%増えた。ロイターが引用したLSEGのアナリスト平均予想の152億3,000万ドルよりも、24.8%高い。
さらに、前年同期のFY2026第1四半期の実際の売上は、約50億1,800万ドルだった。今回の暫定見通しの中央値は、その数字の3.8倍だ。暫定値が最終業績として確定すれば、前年同期比の売上増加率は、約279%に達する。
会社の見通しも市場の予想も大きく上回った
✦ 売上見通しの比較
FY2027第1四半期の暫定見通しと比較の基準
SMCIは、AIプラットフォーム需要の増加を、売上見通し上方修正の理由に挙げた。Microsoft、Google、Amazon、Metaのような超大型テック企業が、今年AIインフラに7,000億ドル以上使うと予想されるという市場の見通しも出ている。
そのお金が、GPUとデータセンターにとどまらず、実際に、サーバーとラックシステムを供給する企業の売上につながっているというシグナルだ。
単に売上見通しだけが上がったわけではない。売上総利益率の見通しも、一緒に上がった。従来の10.4〜10.8%から12.0〜12.5%に上がり、中央値同士で比べると、10.60%から12.25%へ、1.65ポイント改善したのだ。
顧客と製品構成の変化が、マージン改善に役立ったそうだ。
✦ 売上総利益率の見通し
中央値基準で+1.65ポイント。利益は会社の見通しではなく、中央値同士を掛けた単純計算
この二つの見通しの中央値を掛けると、計算上の売上総利益は、従来の約15億9,000万ドルから、約23億3,000万ドルに増える。増加率は約46%だ。
これは会社が発表した利益見通しではなく、売上とマージンの範囲の中央値を掛けた計算だけれど、とにかく、売上総利益の規模が当初の予想よりはるかに大きくなると見込まれるのは、はっきりしている。
AIサーバーの需要がこんなに強いのに、市場はなぜ怖がったのか
今回の発表が出たタイミングも興味深い。数日前から、投資家たちは、AIデータセンターを急速に増やしてきた企業が、その投資費を十分な現金として回収できるのか、疑い始めていた。代表的な事例が、AIクラウド企業のコアウィーブだ。
コアウィーブの株式と債券が一緒に圧迫を受けて、莫大なお金を借りて、GPUとデータセンターを先に用意したあと、収益をあとで得る事業モデルの危うさが浮き彫りになった。データセンターの完成や稼働が遅れれば、お金は先に出ていくのに、収益は後ろへずれ込むから。
✦ SMCIの通常取引の終値の流れ
9月30日〜10月20日、ナスダック通常取引の終値(ドル)。線は目盛りから読み取った概算
スーパー・マイクロの株価も、暫定発表の前までは弱含みの流れだった。9月30日の終値41.07ドルから10月20日の32.47ドルへ、15取引日のあいだに、約20.9%下落した。
この下落をAIバブルへの懸念ひとつだけでは説明できないけれど、発表前の投資心理が楽ではなかったのは確かだ。ところが、10月20日の通常取引の終了後に売上見通しを公開すると、ロイターが報じた時間外取引で、株価は11.3%上がった。
同じ時間、デルとHPEも3.5〜4.9%、エヌビディアは1.5%上昇した。一社の業績見通しが、サーバーメーカーとAIチップ企業に広がった雰囲気だ。
✦ 暫定発表をめぐる日付
10月15日から11月3日の予定まで
今回のSMCIの業績向上が、AIバブル論争の終わりではない。サーバーの注文が強いというシグナルと、AIサービスを運営する顧客が投資したお金を回収しているという証拠は、別の話だから。
スーパー・マイクロがサーバーを納品して売上を上げても、顧客企業がそのサーバーで十分な売上と現金をつくってはじめて、長期的に事業モデルを維持し続けられるだろう。
株価は未来への期待を反映するもので、いまサーバーがよく売れていても、長期的に売れなくなると予想されるなら、投資家たちは、未練なく株を投げ捨てるかもしれないから。
売上が大きくなるとき、現金も一緒にたまっているか
スーパー・マイクロのFY2026の年間業績は、この違いをよく見せてくれる。年間売上は、2025年の約220億ドルから、2026年の約391億ドルへ、77.8%増えて、純利益も、約10億5,000万ドルから22億3,000万ドルに増えた。
ところが、年間売上総利益率は、11.1%から10.8%へ、むしろ0.3ポイント下がった。
✦ FY2026の主な数字
売上は増えたが、現金の流れは反対に動いた
ハードウェア事業は、売上が増えても現金が足りなくなりうる。サーバーを売るには、GPUのような高い部品を事前に確保しなければならず、製品を納品したあとにやっと代金を受け取る場合もあるから。
スーパー・マイクロのFY2026(2025年7月1日〜2026年6月30日)の財務諸表を見ると、この問題が数字で表れている。
在庫は、2025年6月末の約47億ドルから、2026年6月末の約129億ドルに増えて、顧客からまだ受け取っていない売上代金も、約22億ドルから61億ドルに増えた。
部品を買うのにお金は使ったけれど、在庫が売れて、売掛金が入金されるまでには、時間が必要なのだ。そのため会社は、一年のあいだ、営業活動で68億ドルを超える現金を使った。足りないお金は、銀行融資と与信枠、新株発行で埋めた。
外部から資金を調達すれば、当面は事業を続けられるけれど、借金には返済負担がついて、新株を発行すれば、既存株主の持ち分比率が下がる。これから確認すべきことは、売上がどれだけ増えるかだけではない。
積み上げたサーバーと部品が実際の販売につながり、顧客から受け取るべきお金が現金として戻ってくるかを、見なければならない。
スーパー・マイクロは、FY2026の最後の四半期(2026年第2四半期)に、売上111億ドルと売上総利益率17.5%を記録した。売上100ドルから製品原価を引いて、17.5ドルが残ったという意味だ。ところが、1年全体の売上総利益率は10.8%にとどまった。
最後の四半期の収益性が、年間平均よりはるかによかったのだ。今回の四半期の暫定売上総利益率の見通しも、12.0〜12.5%で、昨年の年間平均よりは高いけれど、直前の四半期の17.5%よりは低い。
会計処理が透明かどうかへの疑いもある。スーパー・マイクロは、2025年8月28日の年次報告書で、「財務情報を記録して検証する内部統制に、複数の弱点がある」と公開した。
その後、改善作業を進めて、複数の問題を解決したけれど、2026年8月31日に提出した新しい年次報告書でも、ひとつの問題が残っていると明らかにした。
会計資料を処理する一部のITシステムに、誰がアクセスできるか、アクセス権限をきちんと点検しているかを、一貫して管理できていなかったというのだ。会社は、この問題が2026年6月30日現在も解決されていないと報告した。
もちろん、これだけで財務諸表の操作があるという意味ではないけれど、どこか怪しいのは事実だ。10月15日に新しいCFOを任命したから、会計問題が改善されることを期待してみよう。
では、AIブームなのか、バブルなのか
今回の発表は、AIインフラ需要が実際のサーバー売上につながっているという、強いシグナルだ。AI投資はすべて虚像で、AIがゴミのような成果物を吐き出していると主張する人もいるけれど、それは事実ではないのが確実に見える。
SMCIだけでなく、AIインフラ企業が相次いで驚くべき業績を記録しているから。まともな業績もなく、未来への期待感だけで株価が大きく暴騰していた過去のバブルとは、違う。ひとまず様子を見よう。
11月3日の正式な業績で、SMCIの暫定売上が確定値として確認されるか、積み上がった在庫と売掛金を現金にうまく替えたか、確認してみよう。
これは投資助言じゃないよ。わかってるよね?大切なお金は自分で守ろう。
今回はここまでにするよ。また会おう。
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