AIエージェントはインテルを救うか?CPU需要とインテルの課題

AIエージェントとインテルCPUを描いたイラスト

AI半導体の話が出ると、エヌビディアのGPUから思い浮かべやすい。でも、AIが質問に答えるところで終わらず、複数のプログラムを行き来して実際の業務まで処理し始めると、サーバーの中で一緒に働くCPUも、もっと忙しくなる。

インテルがふたたび注目される理由が、ここにある。

10月19日、JPモルガンは、インテルに対する投資判断を「アンダーウェイト」から「ニュートラル」に上げた。ただ、目標株価は85ドルで、その日の終値92.03ドルより低かった。

CPU需要が増える可能性は認めたものの、インテルの復活を確信したわけではなかった。

では、AIエージェントの拡散は、インテルがふたたび成長するきっかけになるのだろうか? 核心は二つだ。実際にサーバーCPU市場がどれだけ大きくなるのか、そして、その需要のうち、インテルがどれだけを自分たちのシェアとして取り込めるのかだ。

AIエージェントが増えると、CPUはなぜもっと必要になるのか

AIに「前四半期の売上を分析してレポートをつくって」と頼んだと考えてみよう。AIモデルが答えを計算するときは、GPUのほうがはるかに効率的だ。でも、業務は回答の生成で終わらない。

エージェントは、会計システムに接続して、権限を確認して、データベースを照会して、計算ツールを実行したあと、結果を検討してからレポートを保存しなければならない。この過程で、オペレーティングシステムとプログラムを動かし、複数のサービスをつなぐCPUの仕事が増える。

✦ GPUとCPU、サーバーで担う仕事が違う

代替品ではなく、一緒に働く補完財

GPU
• 大規模モデルの演算を素早く処理する
CPU
• サーバーの一般的なプログラムとデータの移動、作業の順番を調整する

つまりGPUは、大規模モデルの演算を素早く処理し、CPUは、サーバーの一般的なプログラムとデータの移動、作業の順番を調整する仕事を担う。二つは、代替品というより、一つのサーバーで一緒に働く補完財に近い。

エージェントが一度答えて止まる代わりに、複数のツールを繰り返し呼び出すほど、CPUとメモリ、ネットワーク資源もさらに必要になるのは、当然だ。

エージェントAIによるCPU需要の変化とインテル復活を解説した〈IT入門チャンネル〉の動画です。
* YouTubeチャンネル『IT入門チャンネル』にあがっている動画だよ。

サーバーCPU市場の成長見通しはどの程度か?

市場調査会社のトレンドフォースは、AIエージェントの推論作業が増えるにつれて、サーバーCPUの出荷量が、2026年は前年比31%、2027年は40%以上増えると見通した。

AIサーバー投資でGPUが主役だという事実は変わらないけれど、GPUだけ増やしても、データセンター全体の作業の流れを処理できないという観点が、ますます重要になってきているのだ。

✦ TrendForceのサーバーCPU出荷量とArmシェアの見通し

市場調査会社の見通しであって、確定した結果ではない

✔ 2026年のサーバーCPU出荷量:前年比 +31%
✔ 2027年のサーバーCPU出荷量:前年比 +40%以上(AI推論・エージェントの導入がさらに拡大するという予想)
✔ 2026年のArm系サーバーCPUのシェア:20%以上(成長の果実をインテルだけが取るわけではない)
✔ 2027年のArm系サーバーCPUのシェア:約30%(クラウド企業の自社チップが競争相手になりうる)

トレンドフォースは、主要データセンターの計画を根拠に、CPUとGPU・ASIC(特定の作業だけを速く効率的に処理するよう設計された専用半導体)の比率が、従来の1対8から1対2へ、一部の構成では1対1に近づきうると見た。

すべてのデータセンターにそのまま当てはまる比率ではないけれど、AIサーバー1台に入るCPU資源がより重要になりうるという見通しだ。

モルガン・スタンレーも、エージェント型AIが、すでに1,000億ドルを超えるデータセンターCPU市場に、2030年までに325億〜600億ドルの追加需要をつくりうると推定した。

数字が現実になるかは、実際の導入スピードにかかっているけれど、GPUに集中していたAI投資金が、CPUとメモリのほうに分散するだろうという分析だ。

インテルの業績は回復しているのか

✦ 同じ四半期、GAAPは損失・非GAAPは利益

二つの指標を互いに入れ替えて使ってはいけない

GAAP
• 会計基準に従って作成した公式の業績
• インテルの第2四半期のGAAP 1株当たり純損失は2.16ドル
非GAAP
• 会社が特定の項目を除いて示した補助指標
• 同じ四半期の非GAAP 1株当たり利益は0.42ドル

インテルの2026年第2四半期の売上は161億ドルで、前年同期より25%増え、データセンター・AI部門の売上は63億ドルで、59%増えた。

会計基準に従ったGAAPの1株当たり純損失は2.16ドルだったけれど、会社が一部の項目を調整した非GAAP基準では、むしろ1株当たり0.42ドルの利益を出したと発表した。

✦ インテルの2026年第2四半期の業績

GAAPと非GAAPの1株当たり利益を区別して見なければならない

✔ 全体の売上:161億ドル(前年同期比 +25%)
✔ データセンター・AI部門の売上:63億ドル(+59%)
✔ 非GAAP売上総利益率:41.8%(+12.1ポイント)
✔ GAAP 1株当たり利益:-2.16ドル(前年同期の変化 -1.49ドル)
✔ 非GAAP 1株当たり利益:+0.42ドル(前年同期の変化 +0.52ドル)

特にインテルは、第2四半期の製品売上の増加に、データセンター・AIなどに関わる高価格製品の販売比重の拡大で、平均販売価格が上昇したことが大きく寄与したと説明した。とにかく、業績そのものは、前年比で良いほうなのは確かだ。

インテルの前に立つ壁は、供給と競争だ

サーバーCPU市場が大きくなっても、インテルが、顧客の求めるチップをタイムリーに供給できなければ、成長の機会を逃すだろう。

トレンドフォースは、インテルの新製品で、工程とパッケージングの問題が出荷を遅らせ、内部の生産能力の制約も、注文をすべて満たすのを難しくしていると指摘した。

需要が強いという知らせと、その需要を納品に変える能力は、別の問題だ。

競争もさらに激しくなっている。AMDのEPYCだけでなく、アマゾンのGraviton、グーグルのAxion、マイクロソフトのCobaltのようなArm系のCPUが、クラウドデータセンターに入っている。

トレンドフォースは、AMDのサーバーCPUシェアが、2026年に約27%に達しうると見て、Arm系は、2026年に20%を超えたあと、2027年に約30%まで上がると見通した。そうなれば、市場が大きくなっても、インテルが占める取り分には限界があるだろう。

JPモルガンの推定値を見よう。インテルのサーバーx86 CPU市場シェアは、2022年11月にJPモルガンが投資判断を下げたときは77%だったが、最近は53%に減った。

この数値はJPモルガンのアナリストの推定だけれど、インテルが過去の優位を取り戻すのが簡単ではないことを見せてくれる。AMDとArmをはじめ、錚々たる競争相手がひしめいているから。

✦ インテル(INTC)の通常取引の終値の流れ

9月28日〜10月23日、NASDAQ通常取引の終値、USD。線は目盛りから読み取った概算

$85$103$12010月22日 -8.04%9/2810/910/23
10月6日の112.50ドルから10月23日の86.96ドルまで、約22.7%低くなった。

こうした懸念を反映するかのように、インテルの株価は、10月6日の終値112.50ドルから、10月23日の86.96ドルへ、約22.7%下落した。10月22日には、1日で8.04%押されて、翌日1.72%反発した。

✦ インテルとAMDの相対株価の比較

直近3か月、7月23日を100に合わせた指数、NASDAQ通常取引の終値。線は目盛りから読み取った概算

IntelAMD
801031277/239/810/23
7月23日から10月23日までの3か月で、インテルは約13.2%下がり、AMDは約4.2%下がった。どちらも下がったが、インテルの下げ幅のほうが大きかった。

もちろん、22日にインテルだけが下落したわけではなかった。ナスダック総合指数が2.60%下がり、フィラデルフィア半導体指数も6.7%急落するなど、AI投資の持続可能性をめぐる懸念が、半導体業種全体を揺るがした日だった。

10月29日の業績で確認する三つのこと

✦ インテルとCPU市場、主な出来事のタイムライン

業績発表から格付けの変更、見通しの公開まで

12026-04-20
Morgan Stanley、エージェント型AIがGPU以外のCPU・メモリ支出も増やしうると分析
22026-07-23
インテルの2026年第2四半期の業績を発表:売上161億ドル(+25%)、DCAI 63億ドル(+59%)
32026-10-06
インテルのQ3業績発表の日程を告知:10月29日の米国市場の取引終了後に発表予定
42026-10-19
JPMorganの格付けをUnderweight→Neutralに、目標株価$85:回復の確信ではなく、リスクと報酬の再評価
52026-10-22
TrendForceがCPU出荷量の見通しを公開:CPUの成長可能性とインテルの供給制約を同時に見る必要
62026-10-29
インテルの第3四半期の業績を発表予定:売上・マージン・供給・DCAIの成長を確認

インテルは、米国現地時間の10月29日、取引終了後に第3四半期の業績を発表する予定だ。日本時間では10月30日の明け方だ。重要なのは、売上が見通しの範囲の158億〜168億ドルに収まるかだけではない。

データセンター・AI部門が成長し続けるか、供給制約が解けて注文を出荷に変えるか、そして利益率とキャッシュフローまで改善するかを、一緒に見なければならない。

AIエージェントの拡散は、CPU市場に新しいチャンスをつくっている。ただ、インテルがこのチャンスをつかむには、顧客の需要をタイムリーに生産・納品し、AMDとArm系チップに奪われた取り分を守り、売上を利益と現金につなげなければならない。

CPU市場が大きくなるという見通しより、インテルが実際にその市場でどれだけを占めたかのほうが、もっと大事だということだ。今回の業績は、その違いを確認する最初の関門になるだろう。

これは投資助言じゃないよ。わかってるよね?大切なお金は自分で守ろう。

今回はここまでにするよ。また会おう。

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